明らかに塩分の多いものは食べないことにした。
すると、
日本食の基本のような、心髄のような食べ物が、
全部消えてしまった。
小さなお弁当箱の減塩弁当を持って出かける毎日となった。
時には、ひとり公園のベンチでお弁当を広げる。
時には、海辺の堤防で海をながめて、お弁当と話す。
こういう生活が、未来永劫続くのだろうか。
こういう生活で、いつまで腎臓を守っていけるのだろうか。
これでほんとにいいのだろうか。
ひとりでお弁当を食べていると、はかなくも余計なことを考え始める。
時には、かつてよく一緒にランチしていた人たちが、
お弁当を買って来て一緒につきあってくれたりもする。
ありがたいことだよね。
人の情が沁みたりするよね。
減塩・腹八分目のダイエット、
さらに一週間くらいが経った頃だったろうか、変化が現れ始めた。
体重が減っていたのだ。
83kg以上もあった体重が1kgも減っていたのだ。
164cmで83kgという、顔はパンパンでお腹はポンポコの体型で、
体型にこそ変化は見られないが、体重は減り始めている。
ほんとか?
間違いじゃないか?
何度も体重計に乗り直す。
「見てみろ、これ、すごいことになってるぞ!」
興奮して妻を呼ぶ。
「まぁ!」
なんだか感激して言葉にならない。
後から冷静に思えば、
1kgの体重の変化なんて、83kgの体重からすれば、
ほんの誤差の範囲でもあり得るのに・・・・。
なのに、感激してしまった。
確実にダイエット効果が現れたんだと、
そこに疑いの余地など入り込むすきもない。
減塩と減量の両面攻撃を耐えてきたのだ。
これだけ苦労すれば効果は出て当たり前じゃないか!
自分を褒め称える。
でも、
腹八分目は一週間くらいで慣れたし、
減塩も同じように慣れていった。
正直、もう、それほど辛いことでもなくなっていたのだ。
でも、
大変だ、がんばった、って言う方が、
なんだか値打ちがあるような気がして、つい・・・・。
「この調子なら、10kgダイエットも夢じゃないな」
「そうね、ぜったいにがんばってね」
はずみがついて、
10kgダイエットを目指そうか、と公言するようになった。
それでも充分な自信は無かったので、冗談めかしてはいたが、
ほんとは10kgダイエットできるんじゃないかと内心思えていた。
(つづく)