はじめてのシャント手術

シャントの手術というのは、腕の動脈を静脈につなぐ手術だ。

日帰りで済む手術なので、そうたいそうな手術じゃないのかもしれないが、

透析への確実な一歩を踏み出すことになる。

 

「手術着に着替えて、こちらのベッドでお待ち下さい」

「はい」

「血圧を測りますね」

150以上はあったと思う。

「大丈夫ですか?」

「どきどきしています」

 

ベッドに横になる必要があるのだろうか、とか思いながら、待つことしばし

 

「お待たせしました。それでは手術室へ参りましょう」

「はい」

点滴のスタンドを転がしながら、自分で歩いて手術室へ。

 

 

部屋の真ん中に十文字になったベッドが据えられ、

その頭上から大きなライトがベッドへ向けられている。

テレビなんかで見るのと同じだなぁ。

 

「ベッドに横になって下さい」

寝返りも打てそうにない細いベッドに上って横になる。

「右腕で血圧を測りますね」

 

右腕は血圧を、左腕はシャントの手術のため、

十文字のベッドに十文字にはり付けられる。

 

左半身が布で覆われ、見えなくされた。

先生、登場。

 

「一時間もあれば済みますからね、がんばりましょう」

「はい、よろしくお願いします」

 

「消毒をします」

左腕に冷たい液体の感触が広がる。

「麻酔します」

構える。

痛いのは嫌いだ、歯を食いしばる。

が、チクッとしただけだった。良かったぁ。

 

 

「感じますか?」

「いいえ」

「では、始めていきます」

 

左手の甲に生暖かい感触だ。血が流れたか?

カチャカチャいう音はなんだ?

ベッドが揺れたな、何をしてるんだ?

 

ビクビクしながら、少しの変化に神経をとがらせる。

手術の進行を想像する。

 

皮膚を切った、動脈を取り出して止血して、切った!

静脈を取り出して止血して動脈を縫い付けた、かな。

知りもしないのに、進行を想像してビクビクしている。

 

 

時計も気になる。が、

しまった、始まりの時間を見てなかった・・・・。

 

 

「大丈夫?」

看護婦さんが見える右側から声をかけてくれる。

「な、なんとか」

「もう、あと少しですからね」

 

気の弱い者にとっては、こういう何でも無い一言が救いの天使のようだ。

 

 

もう終わる、早く終われ。

すると、なんだか左手が痛いような気がしだした。

 

 

「痛いような気がするんですが・・・」

「もう終わるけど、もう一本麻酔打つ?」

「いえ、我慢します」

 

 

我慢する方が優等生の答えなんだとでも思ったに違いない。

でも、言ってしまったし・・・・・。

これ以上、痛くなりませんように・・・・・。

 

 

「はい、あとは縫っておしまいです」

「あ、ありがとうございました」

 

 

布が取り払われて、左手と再会する。

手首の下、親指の付け根あたりの手の甲に絆創膏が貼られている。

 

 

「手首の下でシャントを作りました」

 

普通は手首の上、腕側に作るらしい。

その方が手術がしやすいから。

 

主治医が言うには、腕のいい先生らしく、手の甲側へシャントを作ってくれたとのこと。

もし、将来、そのシャントが使えなくなった時、その時は腕側に作り直しができるのだとか。

 

 

「歩けますか?」

「はい、大丈夫です」

「では、着替えて、お帰り下さい」

 

 

着替えても、手術跡の絆創膏の白さが妙に目立つ。

右手を添えてみては「やっちゃったんだ・・・・」と思う。

 

 

やっちゃったんだ、透析へ一歩踏み出しちゃったんだ。

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