透析導入のために2週間の入院をして、少しづつ透析に体を慣らしていく。
4時間の透析を試したら、
今度は一日おきに4時間というサイクルを試していく。
透析した日と、透析しない日と、その体調の違いが感じられない。
感覚的にわかるほどではない微妙な変化が起きているのだろうか。
毎日、新たな疑問がわいてくる。
さて、今日は、透析中に食事をすることを試すという。
透析中に体を動かしても良いとは言われているが、
まだ起き上がったことはない。
いや、起き上がるどころか、寝返りだってうったことは無い。
おしりや背中をもぞもぞっと動かす程度だ。
それなのに、起き上がって食事をするという。
まさか、寝たまま食べるってこともあるまい。
「お弁当ここに置きますよ」
「ありがとうございます」
「起きられる?」
「どうでしょう・・・・・」
針が刺さった左腕を中心に、左半身はほぼ硬直状態で過ごしている。
頭だって上げられそうにない・・・・。
看護婦さんが、ベッドの上半身を徐々に起こしてくれる。
「どう?気持ち悪くない?」
「大丈夫、みたい・・・」
聞かれれば、気持ち悪いような気がしてしまう・・・・。
ベッドに張り付いたまま、上半身が起き上がったところで、
頭をそ~っとベッドから離してみる。
大丈夫そうだ。
体もそ~っとベッドから離してみる。
大丈夫そうだ。
両手を怖々ベッドについて、座り姿勢(あぐら)を取ってみる。
ここで、ひとやすみ。
大丈夫そうだ。
「ありがとう、なんとかなりそう」
さて、左手は針が刺さったままで恐くて動かせないので、
右手一本でご飯を食べることになる。
が、中が見えない。
ベッドの補助テーブルが高くて、お弁当の中が見えず、
お箸を手探り状態でお弁当の中に運び、何をかつかんで持ち上げて、
何をつかんだか判断して、慎重に口に運ぶ。
ひとつまみ、ひとつまみ、慎重に運ぶ。
この高さは、健常者でも無理な高さじゃないかなぁ。
正座して背筋を伸ばして、やっとどうかってところだろうなぁ。
それにつけても、この行儀の悪さったらないな。
箸使いが下手な人じゃ、ベッドをベトベトにしちゃうな^^;
ゼリーが付いてるけど、蓋はどうやって剥がすんだろう?
ぶつぶつとあれこれ思いながら、
それでもどうにかこうにか完食した(と、思う・・・)。
疲れ果てた感じでベッドに背をつけて、
ベッドの電動の力で横になる。
食べて、すぐ寝ちゃダメじゃん・・・・。
だって、くたびれたし・・・・・・
ぶつぶつ、ひとり問答が続く。
「完食ね、大丈夫でした?」
「はい、食べにくかったけど」
「片手じゃね」
「はい(いや、この補助テーブルの高さ・・・)」
後になって知ることだが、
人によっては透析中に食事を取ると血圧が下がってしまうこともあるようで、
食べない人も居るようだ。
病院によっては、透析中の食事は出さないようなところもあった。
透析は、夜の時間帯を予定しているので、
これから、生涯、夕食はこうして透析のベッドでお弁当を食べることになる。
なんだか、せつないなぁ。
(つづく)