「睡眠薬を処方してもらえますか」
「眠れない?」
「透析の夜はいいんですが、透析の無い日に眠れないんです」
透析のあった夜は、ほぼぐっすり眠られる。
透析5時間中、ほとんどウトウトしていて、
途中1時間くらいはぐっすり眠ってしまっていることが多い。
透析済んで、10時過ぎに帰り仕度をして病院を出る。
ウトウトしているせいか、いつも何となくボーっとした状態で家に帰る。
テレビを見るとも無く見て、甘いものとかつまんで、
女房とひと言ふた言言葉を交わして、ひと休みして、
11時過ぎには布団に入る。
ほどなく眠りに落ちて、朝までほぼぐっすり眠れる。
不思議なくらいに眠れてしまう。
透析というものが、そうとう心臓に負荷をかけていて、
知らず知らず疲れているのかもしれない。
さて、それはそれとして、問題は透析の無い夜の眠れ無さ。
いつもいつも、ということではないのだが、
寝付きが悪く、ごろごろごろごろと何度も寝返りを打ち、
時計が時を告げる音を毎時間数えてしまう。
その間、まったく眠っていないわけじゃないと思われるのだが、
寝覚めは悪いし、眠れなかったという気分を翌日一日ひきづってしまう。
寝がけに布団に入って本を読む。
もう何十年もの習慣なので、たとえどんなに遅くなっても、
ほんの1~2行でも本を読まないと穏やかに眠りにつけない気がする。
本を読んでいると、そのうち睡魔に襲われて、
文字だけは目で追いかけているけど、頭が理解をしていなくなる。
その時が眠りに入るタイミングなのだ。が、
睡魔が襲ってこない。
諦めて本を読むのをやめて眠りにつくべく目を閉じる。
でも、眠れない。
寝返りを打つ。
眠れない。
寝返りを打つ。
そういう繰り返しに陥る。
だけど、睡眠薬を飲むということにどういうわけか抵抗があって、
そういうものに頼るようになると、際限がなくなっていってしまうのではないか、
そういう不安がつきまとい、
これまで一度も処方してもらったことがない。
だけど、睡眠不足が翌日に堪えるようになってきた。
はっきりとぐったりしてしまうのだ、体力も気力も。
そこで、あきらめて、睡眠薬に頼ろうと思った。
「先生に『みんざい』出してもらうよう言っときます」と看護婦さん。
『みんざい』って言うんだ。『睡眠剤』を略してるんだな。
そういえば、以前に隣のベッドの人が、よく口にしていたような。
そんなことはどうでもいいが^^;
「マイスリー錠5mg」という眠剤を処方してもらった。
「まず寝る30分前くらいに飲んでみて下さい」
始めて眠剤を飲むと言ったら、小冊子を広げて薬剤師は説明してくれる。
「布団に入って眠れないなぁって思ってからじゃダメ?」
「それですと、効き目があまり・・・・・」
「でも、眠れるか眠れないかは、寝てみないと解らないし・・・」
「あまり遅くに飲みますと、翌日に残ってしまったり・・・・」
まぁ飲んでみなきゃ解らないし、と思いつつ一通りの説明は聞いた。
さっそく、眠れない夜になり、
たぶん、夜中の1時か2時頃だったんだろうと思う。
枕元に用意しておいた眠剤を一錠服用した。
さぁ、どうなる、眠くなるか、どうか、と気がもめて、
むしろ眠気を飛ばしてしまっているような気がしながら、
結局、ウトウトしただけだった。
次の透析の無い夜、今度は寝る直前に一錠服用した。
すると眠れた。
でもそれは、睡眠剤のおかげだったのかどうかは判断がつかない。
次の透析の無い夜、服用をしたものか、どうしたものか。
はじめての睡眠剤とのつきあい方がまだ身につかない。
(つづく)