父親の年齢を越える

父親が逝った歳を生きている。

いや、命日(9月22日)を越えたから、父親の歳を越えたと思いたい。

 

父は胃がんで58歳で逝ってしまった。

なのになぜか56歳だったとずっと勘違いしていた。

 

私には3人の子供がおり、3人目の子供を33歳の時に授かった。

その時、先々のことを計算し、胸をなで下ろした。

 

この子が大学まで進むことを希望した場合、自分は55歳になる。

なんとか定年退職に間に合うし(その頃は55歳定年だった)、

父親の逝った歳(56歳だと勘違いしていた)にも間に合う、良かった。

 

知らず「56歳」が目標のように心の中に掲げられた。

 

それから時が過ぎて、

50歳を前にして腎臓が悲鳴を上げてしまった時、

52歳で人工透析に陥ってしまった時、

54歳で冠動脈が詰まってしまった時、

まだだ、56歳はまだだ、56歳までは頼むぞ、

56歳、56歳と、呪文を唱えるように言い聞かせた。

 

上ふたりの娘たちはすでに学校を卒業し、それぞれに自立できる。

でも、3人めの子供、息子が自立できるまで、まだだ、まだだぞ、と。

 

そして、息子は大学を卒業した。

大学院へと進んだが、それはもう自分で切り開いていける世界。

33歳の時に指折り数えた55歳の壁をクリアした。

 

56歳まで、あと1年。

あとは息を潜めて暮らせば良いつもりでいたが、

東日本大震災で、人には何が一番大切なのか、今さらながらに考えさせられる1年。

 

ここまでの人生、これで良かったのか、

これからの人生、何を糧に生きていけば良いのか、

 

言っているうちに時間が過ぎ、56歳を迎え、そして越えた。

 

「56歳、親父の歳を越えたよ」

畑仕事の母親に静かに感慨深く告げると、

「何言ってるだね、お父さんは58歳だっただよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

そんな・・・・

 

この30年間、

「56歳」を大目標としてきたのに・・・・

どこで勘違いをしてしまったんだろう・・・・

 

あと2年もあるのか・・・・・

 

「58歳」まで、まだまだだぞ。

力なく唱える。

 

しかし、

この30年で世の中は変わり、定年は60歳に延びているし、

奇しくも息子が大学院卒業するまで間に合うじゃないか。

 

そうだ!

「58歳」まで、まだまだだぞ。

 

言っているうちに、

58歳の誕生日は過ぎ、58歳で迎える父親の命日を過ぎた。

 

父親が逝った歳を生きている。

いや、命日(9月22日)を越えたから、父親の歳を越えたと思いたい。

“父親の年齢を越える” への2件の返信

  1. そうですか、親父さんは58歳で亡くなったのですか・・・・・。
    当時はもっと上だったかな?と思ってましたが。
    自分がその年を超えたことは感慨深いものがあるのでしょうね。
    ちなみに私の父親は御年86歳ですが、まだ元気にゴルフに出かけています。
    多少ボケが入っていますが、とりあえず元気です!
    なので私は父親の年齢はまだ目標なのでこやまんの気持ちになれない、というかそこまで行けるかな?という不安のほうが大きいですね。
    でも86歳を不安と思えるだけいいか?とも思います(笑)。
    これからもお互いに頑張って生きていきましょう!
    宜しく。

  2. Jさん、こんにちは。

    Jさんの親父さん、86歳になりますか、すっかりご無沙汰してしまって。

    こういう歳になってきたら、ご無沙汰は禁物かもしれないね。

    Jさん、がんばって親父の歳は越えないと。親父が見られなかった世界を見て逝かないと冥土の土産ができないよ。

    僕も、もう少しがんばらんといかん。親父は息子二人の子供(孫)の顔を見て逝ったけど、僕はまだ子供3人の子(孫)を見せてもらってないからね。

    まぁ、お互い、無理せず、だけどまだまだだよ。

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