透析導入のための2週間の入院を終えて、透析生活者になっていく。
入院生活は、個室のおかげで大変快適に過ごせた。が、
売店も談話室もなく、まったく他の入院患者と接する機会がなくて、
貴重な体験談やちまたの評判話をひとつも聞けずじまいだった。
退院してから通う透析病院を決めなくちゃいけないのだが、
入院した病院では夜間透析を行っていないため、
どこか別の病院を探さなくてはいけない。
ネットで調べて、該当する病院に電話して、
お話をお聞きして比較検討したいので施設を見せてもらるか、と尋ねると、
医者の紹介がなければダメだと言う・・・・・・。
医者は自分で探して決めてくれればいいと言う・・・・・。
比較検討といっても、施設の優劣の判断の基準を持たないから、
つまるところ、応対に出てくれた人の印象と、施設の清潔感くらいが、
判断材料になってしまうのだが。
結局、同級生の主治医を訪ねて相談して、
家から一番近い病院に通うことに決めた。
同級生の主治医は尋ねる。
「透析、どう?」
「針が痛くてさ」
「どう、シャントは良さそうだね」
「今後さ、薬はどこで処方してもらえばいい?」
「透析病院で処方してもらうことになるよ」
「そうか、世話になっちゃったな」
「また、風邪でもひいたら寄ってみて」
「遊びにくるよ」
10年も通っただろうか、血圧が高くて薬を処方してもらっていた。
これからは、透析病院通いになる。
月・水・金曜日の一日おきの透析ペースになった。
止血も自分でできるようになった。
透析中に食事もできるようになった。
透析中にTVも見、本も読めるようになった。
針を刺す時の汗の量も減った^^;
これで、一人前の透析患者にはなれたんだろうか。
入院中にいろいろ考えるつもりでいた。が、
結局、なにも考えられないで2週間を過ごしてしまった。
透析はまだ、あまりにも特別なことに思えているが、
ごく日常的なことにしていかなくては、これからが過ごせない。
次の一歩から、
何も迷い無く、笑って透析を受け入れていかなくては。
どういう偶然か、結婚記念日に退院する。
27年の結婚生活のあとに透析生活が待っているだなどと、
自分も妻も、想像だにしていなかった。
この2年半ほど、透析にならないようにって、
毎日毎日減塩食事に神経をすり減らしてきてくれた妻に、
そして、残念ながら、透析生活者と連れ添うことになってしまった妻に、
ケーキを買って帰ろう。
家族で、これからの生活のことを話そう。
これで、退院して、透析生活者になる。