「もう一度ギターを弾こう」
誘ってくれる友達が居た。
高校の文化祭で一夜漬けのフォークライブをした同級生だ。
いや、高校の文化祭のライブだなんていっても、
それはライブだなんて言えたしろものじゃなかったし、
人に聞かせられるほどの歌でもギターでもなかった。
でも、自分たちなりにどきどき緊張もし、楽しみもした。
なにより、女の子にもてるような気がしてた。
学生時代が終わり、社会人になり、
自分はいつしかギターを手にしなくなり、
度重なる引っ越しでそのうちに無くしてしまった。
しかし、
その友達は、ギターを手放すことなく、ずっと弾き続け、
今では、確かな腕前になり、ライブハウスなんかに出入りもしている。
「もう一度、ギター弾くか」って誘われて、
でも、自分は、社会に出てからもう30年もギターなんて弾いていないし、
人前で弾いたり歌ったりだなんて、
そんな大それた真似が出来るとは、とても思えないし、
練習しても出来るようになるとも思えなかったし、
「ムリ!」って若者のような返事を繰り返した。
それでもある日、彼が出ているライブハウスをのぞいてみると、
彼は喜び、「ギターは僕が弾くから、歌だけでも歌おう」
吉田拓郎の「祭りのあと」だった。
心臓がはち切れそうに高鳴って、手も足も震え、脂汗がにじみ、
さんざんな出来だった。が、もうあとの祭り・・・・・。
なのに、ライブハウスのマスタも常連と思われる人たちも、
やんややんや、次はギターを弾いて一緒に歌おう、とはやし立ててくれる。
調子に乗りやすい質なのか、次はもっと上手く歌えそうな気がした(笑)
「ギターを買わなくちゃ」
次の日曜日、友達につきあってもらい、中古のギターを物色しに出かけた。
おだてられて木に登っちゃった・・・・・。
(つづく)