心臓バイパス手術も無事に済み、退院へ向けてリハビリが進む。
しかし、ひとつ疑問が浮かんでいた。
手術後、何日かめかにカテーテル検査をした。
バイパスした血管の具合を確認するためなんだと思うが、
その結果を知らされていない。
そのうちに話があるのだろうと待ってはいたが、
説明してくれる気配がまったくない。
おかしい。
何かあったな。
さすがに不審に思い看護婦さんに尋ねてみた。
「カテーテル検査はどうだったのかねえ?」
「あれ?お聞きしてないですか?」
「誰も説明してくれてませんよ」
「先生にお伝えしておきますね」
しまった!みたいな反応に見えたなぁ、看護婦さん。
程なくして面談室に呼ばれた。
先生がおもむろに話し出す。
「バイパスは問題無くつながっているのですが、
1本だけ血液が逆流してしまいました」
「逆流?」
「元の血管の血流の勢いが良かったようです」
「どうなるんですか?」
「バイパスの血流が止まってしまってます」
「どうなるんですか?」
「心臓には血液が送られていますので問題はありません」
大問題なんじゃないの?!、とは思ったが、
「どうするんですか?」
「しばらく様子を見ればよいと思いますが、
ステントで血管を広げることもできます」
「いつごろですか?」
「1年後くらいで」
そんなバカな話があるのか。
それは、「失敗」っていうんじゃないのか。
97~98%は大丈夫な手術じゃなかったのか?
それで黙ってたのか?
聞かなければ言わないつもりだったのか、まさかね。
しかも、心臓血管外科的にはもうお役ご免で、
この後は、最初に診てもらった市立病院の循環器科で診てもらえという。
手術がうまくいって良かったと、
感謝感謝の気持ちでいたものが音を立てて崩れてしまった。
とたんに不信感が募り、文句ばかりが口をついて出てしまう。
なんとも自分の浅はかさに呆れる。
それにしても、
せっかく急いで手術してくれたのに、
3本のバイパス手術中1本はまったく無駄になってしまい、
元の狭くなってしまった血管頼りで心臓に血液を送っている。
1年も様子をみていていいの?
いつ詰まってもおかしくないんじゃないの?
せっかく手術してもらったのに、
心臓に抱えた爆弾は、まだしばらくくすぶり続けることになる。