難病のネフローゼ

音楽仲間のひとりから、
ネフローゼ症候群に罹ったらしい、いろいろ教えて欲しい。
というメールが来て、

知りもしないのに、ネフローゼ=腎臓疾患だと思い、
自分の経験が役に立つ、と思い込んだ。

彼は、
急激に体がむくみ、2週間で5kgも体重が増え、
だるくて力が入らないという。
今は検査待ち(私が白内障の手術をした大病院)で、
それも一ヶ月も先の予約だという。

素人考えにも、
一ヶ月も放っておいて良いわけがない、
ここは透析に陥らないようにケアするしかない、
とにかく減塩とダイエットだと、
自分の経験からその方法などアドバイスした。
私の経験談はこちら⇒

それから3日後、
医大の附属病院ですぐに診察が受けられ、
即入院で二ヶ月くらいの治療が必要だ、とのメール。

こりゃ大変だ。
私のまったく知らないケースが進行していて、
私の経験なんかなんの役にもたたないのに、
知ったようなアドバイスをしたことを秘かに恥じた…。


彼は入院して検査漬けになり、ステロイド治療が始まった。
最低でも二ヶ月の治療になるのだという。
検査の結果は「微小変化型ネフローゼ」というらしく、
原因の解らない難病のようだが、ステロイド治療の効果が
期待できるらしく、ホッとしたようなしないような…

とにかく顔を見に病院に行った。
むくんでいた、驚くほどに浮腫んでいて…
「すごいね…」思わず彼の手を触ってさすった…

彼は、気丈に笑顔を見せてくれたりしたが、
きっとやり場のない喪失感みたいなものに襲われて、
逃げることもできない絶望感にさいなまれているに違いない。

僕がそうだった。

どうして…
どうなっちゃうんだ…

前にも後ろにも気持ちを動かせない。
それを言葉にすらできない。

僕は思った。
治療のことは何も解らないけど、
どん底に居る彼の心情を酌むことはできるのでは、と。
いや、
酌めないまでも手を差し伸べることくらいはできる。

解ったふうな慰めや励ましなんか要らない、
そういう想いを共有できるだけでひとつ気持ちが前を向く。

出直した。
一週間後に病院へ顔見に出直した。

すると、なんと、すっかり浮腫みは引いており、
減塩や制限の多い毎日ではあるが、
一日一杯の珈琲が許されたと、笑顔で言う。

その一杯の珈琲を僕と一緒に飲もうという。

見晴らしの良い病院のレストランで、
小一時間の珈琲タイムを彼と過ごした。

僕は50歳で腎臓アウトを宣告されたんだけどさ…、

何か彼の気持ちを少しでも和らげてやりたくて、
絶望的な気持ちを僕は解っていると伝えたくて、
自分はこうだったどうだったと自分のことばかり話す。

話を聞いてあげなきゃダメじゃん…
話を受け止められる経験を胸に秘めて聞いてあげなきゃ…

今は何を聞いても心に響かない…
解った風な慰めや励ましがかえって心をざわつかせる。
そういう経験を共有して話を聞いてあげなきゃ…

病院を後にして反省する。

透析を経験して10年を過ごし、
人生60歳を超えてもいるのに、
なかなか人の機微を察した言動ができない…。

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