下肢閉塞性動脈硬化症の手術(7)ー悪い知らせー

造影CT検査で足の血管の様子を撮った。
結果良好ならそのまま退院という運びだった。

もちろん、リハビリも張り切って、病棟の廊下をスタスタ歩いて快調ぶりをアピールする。が…

「結論から言ってCTの結果が良くない…」
「ぇえ!?」
「ここ、ステントが潰されてる」
「膝の辺りですね」
「削ったところも新たな血栓が…」
「わずか数日の間に?」
「見たところしっかり歩けてるようやけど、血管の中はこれや」

先生は、カテーテル・風船・ステント・血管切開と経緯をたどり、

絵を描いて説明してくれるし、だめ押しのように、血管を切り開いて石を切ったり削ったりして除去する手術の動画を大画面で見せてくれる。

先生、充分判りました、もう大丈夫です、気が遠くなりそうです…

「このままにするわけにはいかへん、バイパスや」(赤い大きな→)
「はい、判ります」
「なるべく早くにや」
「どのくらいですか?」
「このまま手術したいとこやけど、元気に歩けてるし、それが手術の目的やし、なぁ、難しいとこやなぁ」

ボクが、理屈は判ってるけどビビっていることを察知している先生は、

「明日奥さん来てくれる?」
「はい、退院のお迎えのつもりですけど…」
「ほな、明日奥さんにも同じ話するわ、それで考えて」

奥さんは手術直後にこのビデオを見て平気だった人なので、先生、馬を射るつもりだな…

ひとりになって、消灯前の談話室で妻に電話する。

「すぐにやってもらわなきゃ!」
「だってさぁ、おまえさぁ、まだ痛いしさぁ…」
「おんなじじゃない!」
「そんなことあるか…」
そうだワクチンだ
「明日はまずワクチン打たなきゃ」
「そうか、それもそうね」
「とりあえず一旦明日は帰ってワクチン済ませてそれで考えるか」
「先生、私にも説明してくれるんでしょ?」
「明日な」
「とりあえず行くね、明日ね、じゃぁね」

押しきられそうな圧力を感じながら電話を切る。

お願い、一回リセットさせて、頼む。
まだ傷口は痛いし、麻酔から覚めた後のあの筆舌に尽くしがたい痛みの恐怖から解放されてないだよ、一回帰ってリセットさせてください。

看護婦さ~ん、助けてください~一回リセットさせて~

(つづく)

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