高校生の時、本屋さんの店頭で見かけた「詩とメルヘン」
タイトルに惹かれ、表紙のイラストに惹かれ、手に取った。
ほんの数ページの冊子だ。ページを開いてみると、見開きに一枚のイラストが描かれ、短い詩が添えられている。詩もイラストもとっても新鮮だった。学校の教材で習うような難さはなく、夢中でページを繰った。
が、その優しさから受ける印象で、これは女の子が読む本で、男が手にするようなもんじゃないんじゃないかと疑念が頭をよぎる。それに350円もするし(当時、駅前の立ち食いうどんは100円しなかったんじゃないか?)。購入を躊躇した。
が、じっくり読みたい眺めたいという気持ちが勝って、そ~っとレジに持ち込む。勘定を済ませ浮かれた気分で自転車を走らせ家に帰った。
それは僕を刺激した。詩に心を打たれ、イラストに心を奪われ、そのうちに、こういう詩が書けたら…こういうイラストが描けたら…とあこがれは膨らんだ。
同時にやなせたかしにもあこがれた。それは、やなせたかしという人が詩もイラストも描き、冊子の編集もしていたから。豊かな感性と表現力、加えて編集の力、雲上のスーパーマンだ。
最初は季刊誌だったが、すぐに隔月誌となり月刊誌となった。人気があったのだろう。しかし、月刊誌を買い続けるお金も苦しく、月刊誌となったところで買わなくなったんだと思う。
詩もイラストもあこがれの域を出ないまま、いつかそんなあこがれも忘れてしまった。
それから15年も20年も後だと思う、テレビか雑誌か、何かと、アンパンマンを見聞きするようになり、その作者がやなせたかしだと知った。
え?あのやなせたかしが?アンパンマン?
やなせたかしは、世間受けの良さそうなアンパンマンだなどというキャラクタものに手を染めたんだ。と、何も知らないくせに勝手な誤解をした。僕を刺激した詩とメルヘンの空気感からアンパンマンはないだろう!って落胆した。アンパンマンを知りもしないくせに、ネーミングと風貌から下らないと決めつけてしまった。ちゃんと評価しようともしなかった…。僕の中でやなせたかしはアンパンマンと一緒に下落してしまった。
それからまたずいぶんな時間が流れ、あの詩とメルヘンから50年ほどが経った今、NHK朝ドラで「あんぱん」が始まった。アンパンマン誕生の物語だそうな。特に大きな興味はないものの、朝ドラ習慣で見始めた。と、主題歌が流れるその背景のイラスト、あ、「詩とメルヘン」だ!
気持ちがざわついて居ても立ってもいられない…。
(つづく)

