とうとう透析を覚悟する

体重も20kg減量し、減塩と腹八分目の暮らしは続いた。

腎臓の悪化を告げられ、ダイエットと減塩の毎日を送っていた。

その様子は こちら⇒

 

クレアチニンの値もカリウムの値も横ばいを維持している。

減塩も2年を経過すると、すっかり舌が減塩に慣れ、

塩分の多いものが口に入るだけでぴりぴりと反応するようになる。

そのうち唇がひりひりと痛くなるようになる。

もう、漬け物や干物など、とても口にできない。

唇、舌、口の中が総動員で塩分を関知し、警戒警報を鳴らす。

 

人の味覚というのはこうして研ぎ澄まされていくのかもしれない。

 

そんな日々に、ある朝未明、警戒警報が・・・・・。

 

胸が苦しいのだ。

 

 

苦しくて目が覚めた。

 

ハッハッと、呼吸が荒くなる

 

なんだろう、心臓か?肺か?

 

肺じゃないか、たばこのせいか、そんな気がした。

 

ヘビースモーカーだった。

ショートホープを日に40本ほど吸っていた。

 

きっと肺だ・・・。

 

 

妻を揺り起こす。

「どうしたの?」

「く、苦しい」

「苦しい、ってどうする?」

「い、医者に電話してくれ」

 

同級生の主治医は、

腎臓専門医に連絡しておくから、すぐにそちらへ行けという。

 

それでも小一時間もすると、

苦しさは徐々に収まり、普通に呼吸ができるようになってきた。

 

 

紹介された腎臓専門医に着く頃には、すっかり症状は収まり、

レントゲン写真を見ながら専門医は首をかしげる。

 

「肺水腫かなと思ったのですが、そういう症状が写っていないですねぇ」

「はいすいしゅ、ですか」

「肺に水がたまってしまうんです。

寝ている時よりも起き上がった方が、呼吸は楽になりませんでしたか?」

「いや、そうでもなかったような・・・・」

「そうですか。でもいずれにしても、もう透析を始めた方が良さそうですね」

「え?」

「腎臓で血液中から充分に水分が除去できてないようですし」

「え?」

 

そんなバカな。

努力してるじゃん。

減塩して、ダイエットして、・・・・・

 

「その水分が、肺に滲み出てしまうか、心臓に滲み出てしまうか、

手遅れにならないうちに手を打ちましょう」

「・・・・(そんな・・・)・・・・」

 

 

引導を渡されてしまった。

 

 

透析導入のための入院設備を持った病院と連絡を取ってくれて、

シャントの手術日と入院の日取りが決められた。

 

「この日で良いですか?」

「はい・・・・・。」

 

良くない、ちっとも良くない。

そんなバカな、透析しなくちゃいかんの?

まだがんばれるんじゃないの?

がんばるよ、俺はがんばれるよ、がんばらせてよ・・・。

がんばるんだってば、がんばってきたんだし・・・。

 

「では、今日はこれで」

「ありがとうございました」

 

何を言ってんだ。

何を優等生ぶってるんだ。

まだ、イヤだ、透析なんかイヤだ~!

 

お勘定を済ませ、駐車場の車に戻り、シートに沈み込み、

エンジンをかける力もなく、何かを考えられもせず、

 

何の覚悟も決まらず、

透析へのシナリオが動き始めてしまった。

 

つづく

 


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