「もう一回練習しておくか」
これからライブハウスへ出かけようという段になって、
急に不安でいっぱいで、気持ちが引き気味で、往生際悪く、
もう一回ギターを歌を、練習しようとメンバーにすがりつく。
高校の同級生と始めた、いわゆる「親父バンド」は、
とうとうライブハウスにデビューする日を迎えていた。
フォークソングが高校生活の背景に流れていた70年代。
もっといえば「かぐや姫」の神田川が高校1年生で、解散が高校3年生だった。
ギターを弾いて歌を歌うのがカッコいいと思っていた。
女の子にもてる、と思っていた。
無謀にも一夜漬けで学園祭のステージに立ったりした。
メンバーの3人ともが、
同じキャンパスに描いたその頃のあこがれのような思いを胸に、
またギターを弾き、フォークソングを歌い始めた。
そう、あれから40年近く、まだ女の子にもててないのに^^;
話がそれたが、ライブハウスにデビューする話。
30分の持ち時間なので5曲を用意した。
あの頃の、かぐや姫、南こうせつ、吉田拓郎の曲を用意した。
ライブ予定時間の1時間前にライブハウスに着くと、
すでに他の出演予定の人達が準備をしている。
30人も入ればいっぱいなくらいのこじんまりしたライブハウスだ。
メンバーのひとりは、これまですでにひとりで何度か出演しているため、
ライブハウスのスタッフとも他の出演者とも顔なじみのようだ。が、
私は初めてのため、緊張感が一気に高まる。
「初めまして、よろしくお願いします」
「待ってましたよ、楽しみにしてます」
あいさつも上の空気味に準備を済ませ、出番を待つ。
他の出演者の人たちの腕前は、
自分たちとは比べ物にならない格段の上手さに思える。
とてもライブを楽しむどころではない。
それよりも場をはずしてギターも歌も練習をしておきたくなる。
さぁ、そしていよいよ出番が来た。
足の震えがおさまらないままにステージにあがる。
「はじめまして、みなみ~ずといいます」