白内障(3)手術の失敗

白内障の手術をすることになり、(その話はこちら⇒

待ちに待って、いよいよ手術の日が来た。

手術3日前からの目薬の面倒な指示をキチっとこなし、
朝一番で病院に入り、手術の心得のDVDなど見せられて、
いよいよ手術室へ(9:25、予定より5分早い、10時には終わってるな)

思えば、スタートからつまづいていた。
コンピュータの調子が悪いようで手術がすぐに始められない。
先生は手術室を出たり入ったりしている。
イライラしてる?(不安がよぎる…)

その間に目の麻酔も済んだようで、いよいよだ。

先生が、どっちの目を手術するのかと聞く。が、
そもそも口数が少なく、ぼそぼそしゃべる先生なので、
何を言っているのかよく聞き取れなかったりするわけで、
「え?」聞き返した。
「どちらの目ですか?」先生ちょっと語調が強い…。
イライラしてる感じだなぁ…(どんどん不安になる…)

「楽にして」
自分でも緊張で体中に力が入っていることがわかる。

「まっすぐ見て」
見ているつもりなのだが、先生の求める位置と違うようで、
「まっすぐ見て」先生やっぱり語調が強い…。
「一番明るい光を見てください」助手と思われる人からの助言。

そうだよ、そう言ってくれればわかるのに、
そもそも霞んじゃって見えてない目で、
どこに視線を向ければいいやら…。

後から家内と話していてわかったのだが、
私が「真っ直ぐ」と思っている視線は、やや下向きになっているらしい。
真っ直ぐ向いているつもりが、実は下向きだったわけで、
人生この60年、下を向いて生きてきてしまったのか…

手術は始まった。

メスが来るぞ、いつ来る?今か?まだか?
うわっ!水がかかった!びっくりしたぁ、メスじゃないのか!

もう緊張で手に背中に体中に力が入り汗がにじみ、呼吸が早まる。

「楽にして、目を動かさないで」
先生の語気に怒られているような気分になり凹んで萎縮する…

あれ?もう切られたのかな?
目ん玉に違和感があるぞ、水晶体を掻き出してるのか?

DVDを見せられているばっかりに、想像だけが膨らみ、
だけど、説明は無いので何をしているのか解らないし、
それがいつまで続くのかもか解らないし、どんどん緊張が高まる。

先生が何か薬を要求してるみたいだけど、
助手の人の段取りが悪いのか、それがすんなり出てこないようで、
先生、イライラしてる?

今は、何も処置してないのかな?
目の緊張は解いてもいいのかな、
それとも、動かしちゃいかんのかな、まばたきしたいな…

うん?レンズがどうの、って言ったぞ。
レンズを入れるんだな、水晶体の掻き出しは終わったんだな。

目ん玉の違和感が変わった。何か機械が妙にゴワンゴワンいう。
レンズが入れば終わりだぞ。

「レンズが出てきちゃうなぁ」
珍しく先生の言葉がはっきり聞き取れた。
異変が起きているらしいことがわかる…

そこからが長かった。
目ん玉への種類の違う違和感、何度も目にかかる水、機械音、
いったい何をやってるんだろう?
いつまで続くんだろう?
不安ばかりがどんどん膨らみ、体中に力が入り、汗がにじむ。

もう勘弁してほしい。目の緊張を解きたい、まばたきしたい。

「レンズが入らないので、後日やり直したいと思うが…」
それでいいかと尋ねられているようだ。
そんなのありか!そんなのイヤだけど、イヤって言っていいのか。

沈黙してると、
目が動いたので何かが破れてしまった、というような事を先生は言う。
それは僕が悪いってことなのか、気持ちが萎えていく…

「わかりました…」

なんとなく手術室中が重苦しい空気の中、手術が終了した。

言葉もなく、車椅子で手術室を出て控室へ。
「何時ですか?」力なく手術室の看護婦さんに尋ねる。
「11時です」
1時間半もやってたのか…
10分15分で終わる手術じゃないのか…
「こんなことよくあるんですか?」
「滅多にありません」

家内が呼ばれてきて、先生から説明があった。

曰く、
目が動いたので何か(聞き取れない…)が破れてしまった。
レンズは入ったので瞳孔を閉じる薬を入れてしまったので、
入れ直せなかった。
入ったんだけど普通と違って斜め(何が?)で長い目で見ると良くない 。
突然見えなくなったって言ってたね、それかなぁ…。
etc…

何言ってるんだ、おかしいじゃないか。

と思ったが、
そうは言えなかった。

医師に反論するなんて想定外だし、
僕の目が動いたからと言われていることに凹んでいた。

そして、こんなに怖くつらい思いをしたのに、
何の報いも無い…

なのに明日から術後の厄介なケアだけは始まる。

意気消沈、言葉もなく、
白く霞んでいた世界は、 お先真っ暗になってしまった。

つづく

“白内障(3)手術の失敗” への6件の返信

  1. 初めまして。

    透析の検索から、貴ブログにヒットしました。
    まだ少ししか読んでませんが、共通する病気を経験し、音楽の趣味にも興味があります。

    小田原在住、68歳 男

    3年半前に、心臓バイパス手術、3年前に白内障の手術、1年前から人工透析。
    当然ながら、仕事はリタイヤ・・・・
    貴殿と同じように絶望的になりながらも、残された時間は短いと悟り、少しの時間も無駄の無いように過ごしています。

    記事が書かれた日時が不明のため、更新の頻度が分かりませんが、また、訪問したいと思います。
    過去ログも参考にさせて頂きたいと思います。

  2. えーーー!!
    失敗ですか?!こんばんは。
    一時間以上眼を開けっぱなしだったんですね、辛いわーー。
    そんなに時間かかっておきながら、やり直しですか?酷いですね。
    何の袋が破れたんでしょうか、それは本当に患者のせいですかね。だって目が動くなんて十分あり得ることですよね!
    患者のせいにするなんて良くないと思いませんか?
    腕の悪い医師だったんじゃ??
    絶対に手術は無事に済んで、よく見えてるものとばかり思ってました、残念です。
    それに、まっすぐ見て、というのもわかり難いですよね。
    白内障の手術が怖くなりました。60年下を向いて‥‥ってところにクスッとしちゃうけど。
    まだ見えてないということですよね、不便でしょうね。

  3. ユメさん、こんにちは。

    目が動くのなんて想定内の手術じゃないのか!
    って思いもするものの、
    ほんとんどの人が難なく済んでいる手術だということは、
    想定外の目の動きをしてしまったのではないかと反省したり…。

    恐くて、目が逃げ回っちゃったんだろうね、きっと。

    今は白い霞は取れましたが、焦点の合わない景色が見えています。

  4. Windmillさん、初めまして。

    私と同じ病気自慢ができるんですね^^
    心強いです。

    記事の更新はとっても気まぐれです。
    立ち上げ当初は体験を精力的に書き綴っていましたが、
    今は何かアクシデントがなければ、月一度の血液検査の結果しか更新してません。

    そんなブログですが、
    お時間が許せば遊びに寄って、コメントなどもいただけると嬉しいです。

    よろしくお願いします。

  5. こやまんさん、ご無沙汰してます。
    透析も2年を超しまして、何の合併症も無く、週3日のお仕事(^_^)をこなしております。
    半年程前にうちの嫁さんも白内障の手術を受けました。
    片目手術後1週間空けてもう片方と簡単に済みました。
    現在は遠近両用の眼鏡をかけて、テレビもよく見えるし買い物に行っても値札も良く見えると喜んでいます。
    嫁さんは鈍感な性格なので、先生の「簡単やでぇ❣️」の話を信じあれよあれよの間の手術でした。
    こやまんさんも再手術無事に終わりますようにと祈っています。
    さて、透析生活も3年目に入って、昨年から再開した朝のウォーキングももう少しで、半年無欠勤と頑張っております。と言っても朝5時くらいから1時間強の速足歩きだけですが、その後に朝風呂に入って、朝食後透析にと行っております。
    そのお陰かどうかは昨年は風邪をひくこともなく、過ごせました。
    最近はチョット花粉症には弱っております。^_^

  6. akihilloさん、こんにちは。

    白内障の手術が厄介だなんて話は、確かに誰からも聞こえてきません。
    「怖いぞ~」と脅かす輩は居ますけどね^^;

    akihilloさんは意志の強い方なんですねぇ。
    早朝一時間の早足ウォーキングなんてなかなか続くもんじゃないですよね。
    そして朝風呂、朝食、透析、という規則正しい生活リズム、脱帽です。

    それに比べて、
    私はチコちゃんに叱られてしまうほどボ~っと生きてまして、
    白内障の手術がうまくいかなかったのは、そのバチが当たったのかもしれません。

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