知らないことだらけの透析

入院して、透析を導入する日々がが始まった。

 

初日、衝撃的な針の痛さで始まった透析だったが、

2日めはどうなることやら・・・・。

「それでは透析に行きます」

初日は午後からだったが、今日は9時半から迎えが来た。

早いスタートなんだ。

 

 

「今日は30分延ばして2時間半にしましょう」

「はい」

「800gくらい引きましょうね」

「そうですか」

30分延ばすことは、だんだんと4時間に近づけていくためなんだろうと、

うすうす理解はできる。

だけど、800g引くということの是非を判断できない。

 

知識が無い、勉強が足りないのだ。

 

 

『一日置きに透析し、一回に4時間かかる。』

思えば、それしか 知識が無い・・・・。

 

 

「ドライウェイトがまだ決まってないのね?」

「ドライウェイト・・・・?」

 

 

勉強不足だ、いや、透析のこと、何も勉強してない。

誰にも教わってもいないし。

 

こりゃいかん。

他人事じゃない、自分のことだ。

前向きにとらえて、ちゃんと勉強していかなくちゃ。

 

 

「それじゃ、針刺していきますね」

「お願いします」

 

昨日の初めての衝撃的な痛さに耐えられるよう、

歯を食いしばって身を固くして構える。が、汗がにじみ始める・・・・。

 

ぶすっ!

そういう音がしたと思われるほどの衝撃が体を走る。

一度に体中から汗が噴き出す。

 

「ごめんね、もう1本ね」

「はい・・・・・」声がかすれてくる。

 

ぶすっ!

やっぱり、そういう音がしているとしか思えない衝撃だ。

吹き出した汗が流れ始める。

 

 

「汗びっしょりね、緊張しちゃう?」

「はい、明日は、汗を拭くタオルを持って来ます」

 

透析が始まって、じんじんしている左腕に気持ちを奪われながら、

静かに目を閉じて深呼吸する。

 

ドライウェイトかぁ。

腎臓が機能しなくなると、本来の体重がわからなくなってしまうという。

そこでいろいろな観点から、本来あるべき体重を割り出すという。

それが、ドライウェイト。

透析が済んだら、ドライウェイトになっているように、

透析で水分等を抜いて調整するのだという。

 

それは後で看護婦さんに聞いたことだが、

そんなことも知らずに透析に突入してしまった。

 

透析を受け入れることに抵抗して、透析を回避することしか考えていなかった。

一生逃げられない透析なんだから、遅まきながら勉強しなくちゃ。

誰か、体系的に教えてくれないかなぁ。

 

断片的なことは教えてもらえるけど、総合的体系的な知識でないと、

誤った理解をして、間違った方向へ進んでしまったり、

些細なことにつまづいて一喜一憂してしまいそうだ。

 

 

透析患者の心得10箇条

 

 

そんな切り口の本とか、あるかもしれないな。

 

そんなこと考えるとも無く頭の中でぐるぐるしているうち、透析修了の音楽が鳴る。

 

看護婦さんが終わりの処置をしてくれて、止血に入る。

ここがコミュニケーションのチャンスだな、とさっそく質問攻め。

 

「透析はどうして4時間なの?」

「透析中にトイレに行きたくなったらどうするの?」

「ドライウェイトってなに?」

「塩分とか水分とか制限はどうなるの?」

 

それから、それから、・・・・・・。

何を聞けば良いのか、勉強不足はそれすら想像できない・・・・。

 

「家はこの辺?」

「車で10分です」

看護婦さんの質問は、世間話テーマで、

それにつられているうちに、止血も終了した。

 

 

慣れない痛み、

知らないことが何なのかもわからない不安、

この先の透析生活が思いやられ、重い気持ちでひとりの病室で無口になる。

つづく

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