心臓バイパス手術を終えて、集中治療室で。
「ご家族の方がお見えです」
集中治療室の決まった時間だけ家族の面会が許される。
「お父さん、大丈夫?」
娘がベッドサイドで手を握って声をかけてくれる。
「大丈夫だよ」
「痛む?」と妻。
「ぁあ」
その後ろに母親が、
「良かったやぁ、夕べ手術室からでてきた時は真っ青な顔色だったに」
顔色が普通に戻ってきていて正気がついたようだと安堵する。
家族は、一時間くらい居てくれただろうか、
また夕方来るといって帰った。
と、集中治療室へ透析の機材が持ち込まれてきた。
集中治療室で透析を受けるようだ。
ただでさえ、いろいろな管でがんじがらめのところに、
さらに透析の針で動きが封じられる。
って、もとより術後の傷痕が痛くて動けないが・・・・。
動けない痛みの腰と背中で4時間をじっと耐える。
「ご飯食べる?」
透析が終わるとご飯が来た。もうご飯を食べていいのか。
でも食欲が無く、ヨーグルトだけ食べさせてもらった。
冷たくて口が気持ちいい。
そして、夜。集中治療室の夜は長い。
「看護婦さん、背中が痛いよ」
「どうする?優しくする?強制的にやる?」
「どうせ痛いから、一瞬でエイってやってくれる?」
「じゃいくよ、しっかり脇締めて、傷口押さえて、いい?」
「それ!」
「ぅうわ~!・・・・・・・・・・・・ぁっ」しばらく痛みにじっと耐える。
寝返りを打たせてもらったのだ。一晩に何度か繰り返す。
「痛み止め、打とうか?」
「その痛み止めが痛いから・・・・・・、でも打って・・・」
肩への筋肉注射だ
なんでも透析患者はあまり強い痛み止めは打てないらしい。
腎臓に負荷がかかるから?
でも腎臓はもう動いてないんじゃないの?
痛み止めが弱いのか、あんまり効かない。
「もう一本、打つ?」
「いや、我慢する」
夜はなかなか過ぎていかず、
でも、そのうち少しまどろんだようだ、朝が来た。
(つづく)