心臓バイパス手術を受けた。
「具合はどう?」
真夜中だったろうか、目が覚めた。
朦朧とした意識の中で薄明かりを認めた瞬間、激痛が走った。
気がする。
「もう少し、眠りましょう」男の人の声だ。
痛み止めなのか、麻酔なのか、また眠ってしまったようだ。
どのくらいの時間が経過したのか、また目が覚めた。
手術は終わったってことなんだな。
「痰を取りましょう」
朦朧としていたが、痛みで体が弾んだような気がした。
「右足は動かしちゃダメですよ、動脈を止血してますからね」
「(わかった)」
声が出せない。何かがのどにつかえている。
「のどの管を抜きますね、深呼吸して」
深呼吸?胸が圧迫されてるみたいで深呼吸ができない。
必死に試みる。が、できない。
「はい、管を抜きますよ、深呼吸続けて」
何かを吐き出すような感覚で管が抜かれたようだ。
「はい、抜けた。楽にして下さいね」
意識が次第にはっきりしてくる。が、
体が動かせない。
「大丈夫?」
「よくわからない」
「手術は無事に終わりましたからね」
「ありがとうございました」
そうか、終わったか、無事に終わったか、良かった。
痛いんだか、苦しいんだか、
呼吸が切ないようで、ちゃんと言葉が発音できていない。
今、何時になるんだろう。
(つづく)