透析患者になって2年半が経過した頃、
毎日繰る日も繰る日も、シャントの痒みに悩まされていた。
つい、ひと掻きしてしまい、
その刺激がさらなる刺激を呼び覚まし、痒くて痒くて耐えられなくなる。
シャントを真っ赤に腫らしたり、掻き傷跡を残したりして透析に臨むと、
「ボタンホールに挑戦してみる?」
「ボタンホール?」
「ペンレス(麻酔シール)を貼らないようにしたいでしょ?」
確かに、ペンレスが痒みの原因であることは想定される。
ペンレスは、透析の2時間前から貼っているので、
そこそこそれなりの時間、貼り続けられる。
ボタンホールにすれば、ペンレスを貼らなくて良くなるとのこと。
ボタンホール
「事前に穴を開けておいて、常にその穴に針を刺す」そういう方法があるらしい。
「痛くないし、ね」
「痛くない?!そんな方法があるの?」
「そうよ、そうすればペンレス貼らなくても良いし」
痛くないという言葉に食いつく。
そんな夢のような方法があるのか。
「それなら、み~んなその方法にしたいって言うよね?」
「ある程度、決まった人が刺さないといけないから・・・」
なんだか看護婦さんの言葉尻が濁る。なんで?
何か代え難いデメリットがあるのか?
「ボタンホールのこと、もう少し詳しく教えて」
「じゃ、あとで資料持ってくるね」
ペンレス(麻酔シール)でかぶれてしまうのを回避するため、
透析針を刺すのが痛くないという方法を真剣に考える。
病院でもらった資料によれば、
<メリット>
・疼痛の緩和、消失が図れる。
・穿刺ミスによる皮下血腫の発生が少ない。
・止血時間は通常穿刺と同等か短縮できる。
・穿刺による血管壁の損傷が少ないと考えられ血管の温存に効果的
<デメリット>
・永久的なものではないため、作り替えが必要な場合がある。
・医療スタッフの穿刺習熟に時間を要する。
・針が入らない場合もある。
・痛みが強くなる場合もある。
「痛みが強くなっちゃうこともあるわけ?」
「以前にそういう人が居たの」
「その場合は、元に戻せばイイわけだよね?」
「造るのに痛くないの?」
「通常通りの穿刺を繰り返して造るの」
「痛さは同じだね」
「同じ場所から同じ角度で数回繰り返すとホールが出来る」
「毎回同じ場所じゃ、いじめにあってるみたいだね^^;」
「そうね^^;」
「痛くないんなら、み~んなボタンホールにすればイイよね?」
「スタッフの熟練も必要になるから・・・・」
「現状のスタッフじゃ廻しきれないってことね^^;」
「検討してみて」
「やる!」
「やってみる?」
「やる。ダメだったら戻せばイイんだよね、やる!」
「4月からということにしてくれる?」
「スタッフのローテーションがあるわけね、了解、お願いします」
ボタンホールにトライすることにした。
痛くなくなりますように^^
(つづく)