病室の隣人

四人部屋を独り占めでわがままに使っていたが、とうとうひとり入ってきた。

透析に行っているうちに入ってしまっていて顔も見れていない。年の頃もわからない…さて

見ればカーテンが半分開いている。こりゃ期待が持てそうだ。

それぞれがカーテン締め切りで話もしない。ヘタすると挨拶も交わさないなんていう息が詰まってしまいそうな昨今の入院事情には閉口するばかり…

こちら側はカーテン全開で声をかける。
「こんにちは、よろしくお願いします」
ちょっと間があって…
「あ、こんにちは…」
顔を覗かせて挨拶が帰ってきた。ヨシ!いいぞ!年格好も同じくらいと見た。

「初めまして、古山です」
「あ、よろしくお願いします」
言いながら彼は起き上がってベッドに腰を降ろす。

良かった、順調に話が進む。
いつからの入院か、どこを手術したのか、透析患者なのか、住まいはどこか、etc…

思いの外よくしゃべってくれる人だった。これで挨拶はもちろん、日常の話もできて、息が詰まることもない入院生活を送れそうだ。

なんと、彼は同じ中学校出身のひとつ上の先輩だった。彼とは直接の顔見知りではなかったが、共通の知人も多く話が弾んだ。もちろん、透析のことや血管手術のことが一番の共通の話題だが。

これで空きベッドはあとふたつ、どんな人が来るのか来ないのか、病室の隣人と気兼ねなく息が詰まることなく入院生活が送れるよう祈るばかり。

つづく

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