またしても足の動脈の手術(術後の永い夜)

ピッ ピッ ガタガタガタ ピッ ピッ

母さんは帰り、看護師さんも居ないのか、静かになった部屋に心電図の機械音だけが響く。が、ガタガタガタってのは何だ?不自然じゃないか…

看護師さんに知らせたいけど、大部屋だしナースコールは大袈裟な感じだし…

気になって気持ちをすっかり奪われていると、看護師さんが現れた。ここぞとばかりにガタガタガタを知らせる。

「やかましいね…古いのかなこの機械…」だそうだ…

「痛みとかしびれとかない?」
「今のところ…」
「何かあったら呼んでね」
「あ、あのさ、痛み止めなんだけど…」

術後に痛み止めをしてもらうようお願いしている。目が覚めても痛みに襲われなかったのでちゃんとしてくれているようだ。

「6時間で切れるよね?」
「痛み止め、してないよ」
「え?そうなの?」

じゃ、どうして痛まないんだ?前回の手術の時は痛み止め注射してくれたって先生言ってた。初回手術の時の麻酔目覚めに襲われた痛みは尋常じゃなく、家内の手を握りしめてのたうち回った。その恐怖が忘れられないわけで…。

妙に笑いながら話す麻酔担当の人が”いいように”やってくれたんだろうか?違うな…。

疑問は残りながらも、ぼちぼち動けない苦しさに襲われ始めている。心電図やら点滴やらあれこれ体にくっついてるし、何より首にも点滴が刺さっている。怖さ半分で動きが取れない。どの程度動かしていいのか聞きたい。が、ナースコールもはばかられる…。何で大部屋なんだ!

限界だ!勝手にそ〜っと腰を浮かしてみる。お、良さそうだ、浮かせられるぞ…左足はどうだ?手術は右足だし大丈夫だろう…うん、大丈夫!体を横向きにしちゃいかんだろうか…もう腰も背中も痛くてたまらない。が、首の点滴が怖くて動けない…。

ナースコール!仕方がない、同室の人、申し訳ない…。

「首、動かしていい?」
「ちょっとだけならね」

ちょっとか…そ〜っと首を傾けてみる。良さそうだ。この勢いで体を横向きに!と、右足を動かしてしまい激痛が!クッ!声が出る…申し訳ない…。

深呼吸してやり直す。そ〜っと首を傾けて、左足を立てて右足に力を入れないようにそ〜っと体を傾ける。ぉお〜背中が浮いて楽になる。フ〜!また声が出てしまう…。

首と右足に力を入れなければ相当まで動けそうだ。左に傾け、右に傾け、時々右足に力が入ってしまい激痛に沈みながら、孤軍奮闘、次第に傾ける角度を大きくしていく。そして傾けを左手で支える。左手はシャントがあるためフリーになっている。
傾きを支える枕があるはずだ、欲しい!がナースコールははばかられる。大部屋が恨めしい。しかもこの部屋、ナースセンターから一番遠い部屋ときている…。

眠れない長い長い夜、看護師さんも思うように呼べずに孤独な永い永い夜、なるべく音たてないように痛みを誘わないように、そ〜っと右に左に体を傾けて、腰や背中の痛みに耐え続ける。

「電気つけますよ〜」
やった!朝だ!朝がきた!
朝がきたからって痛みとか何かが変わるわけじゃないけど、何か孤独な闘いから抜け出れたような気持ちになる。
「おはよー!体起こしていい?」
「いいよ、朝ごはんがくるし」
「そうか、起きて食べるんだ…」
「そしたら透析ね、早めに行くから」

透析だ…まだ、5時間の闘いが待っている…。

(つづく)

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