なぜだか解らないが、シャント音がしなくなり、
風船治療か再手術が必要になり、シャントを作ってもらった先生を訪ねる。
「先生はただいま手術中ですので、お待ち下さい」
待合室で文庫本を広げて先生を待つ。が、
広げた文庫本は一行も読み進められずに、
風船?手術?と両方のシーンが頭の中を繰り返しよぎっていく。
その上、動脈からの強制的透析を想像する。
動脈からってことは、足の付け根んとこから針を刺すんだろうなぁ。
そうなると、止血のために6時間程度の地獄の絶対安静が待ってるなぁ。
待てよ、2カ所の針のもう一方はどこに刺すんだろうか。
イヤだなぁ。
マッサージし過ぎた手首のあたりの痛みが増してくるようだ。
「どれ?」
先生はシャントに手を添えて言う。
「完全に止まっちゃったな。風船するより作り直した方が早いな」
「はぁ・・・・」また手術だ・・・・
「先生、でももう11時ですよ・・・・」看護婦が時間を気にする。
先生は今手術を終えたばかりなのに、次の手術の予定が入っているらしい。
「11時か、う~ん、大丈夫だろう、すぐ始めよう」
「(え?すぐ?心の準備が・・・・)はい、お願いします」
優等生の患者ぶって 、わがままを飲み込んで返事を返す。
詰まってしまったシャントは、
手首の少し先で、親指の付け根の少し上の手のひらに作られている。
通常は手首の少し上、前腕に作ることが多いらしい。
その通常の位置に作り直すと先生は言う。
2~3ヶ月おきに、シャントの造影検査をし、
もう何回か風船治療も繰り返してきた。
そんな爆弾を抱えてびくびくしているより、
いっそシャントを作り替えてしまったほうがすっきりする。とは思ったが、
そんな、すぐにだなんて・・・・。
「では、準備をしましょう」
看護婦さんに手術の準備に連れて行かれる・・・・・。
「こちらでパジャマに着替えて準備してて下さい」
一年半前のはじめてのシャント手術の時とまったく同じだ。
パジャマに着替え、ベッドに腰を下ろして待つことしばし。
また、局部麻酔の恐怖の一時間だなぁ。
恐い思いばかりが心を占領していく。
「お待ちどおさま、支度はいい?」
「はい」血圧がグンと跳ね上がったのが解る。
看護婦さんは、手際よく点滴の支度を済ます。
その点滴の針が刺さっただけで、さらに血圧が上がる。
「2回目だから、慣れたもんでしょ?」
「いや・・・・・」そんなわけないじゃん!
点滴のスタンドをお供にして、手術室へ入る
(つづく)