シャントの再手術から10日が過ぎ、抜糸の日を迎える。
手術後の何日かめから、
手術跡が部分的に腫れて赤くなってきて、親指の付け根あたりが鈍く痛い。
透析病院の看護婦さんによれば、
シャント手術によって分断されて動脈の先に血液が充分に循環しなくなって
いることも考えられる、とのこと。
なるほど、納得のいく話だ。
心臓冠動脈バイパス手術の時も疑問に思った。
肩から両脇腹へ向かう動脈を切って冠動脈へつなげちゃったわけで、
両脇腹へはもう血液は運ばれなくなってしまうわけで・・・。
両脇腹あたりの細胞は血液が来なくて死んじゃうんじゃないの?
って、これには納得いく説明をもらってないままだ・・・・・・。
「先生、ここが鈍く痛いようなボワンとするような」
「ここか?」
先生の手が親指付け根あたりに当てられる。
「手当て」は自分の手でも痛みが和らぐのに、ましてや先生の手となると、
もう痛みは消えてしまうかのように思える。
「ここは神経を痛めちゃったんだ。こういう方向に(腕に垂直に)切るから」
「そうですか」
「治るから心配ないよ」
「良かった」
「時間がかかるけど」
「そうですか・・・・・」
まぁ、治るんなら問題ない。
何か重大な事態への前兆だったりしなければ、全然問題じゃない。
心臓バイパス手術で左手の小指と薬指が痺れたままになっている。
その上に、今度は同じく左腕の親指の付け根のしびれが加わった。
今更ながらに、「障害者」だ・・・・。
そうそう、抜糸の話です。
「じゃぁ、抜糸していくよ」
って、そんなところはまともに見られない。
どんな小さな注射だって刺すところを見るわけにはいかないのに、
傷口を引っ張ったりするわけでしょ?ムリ。
なのに、見てしまった。
顔を背けそびれてしまったのだ。見てしまった。
ピンセットで一本めの糸が引っ張られた!
肩に力が入り、腕を引っ込めてしまいそうになる。
はさみが来た、先の反ったはさみが糸を切りに来た。
チョキン!
「うっ!」思わず声が出そうになる。
糸が引き抜かれる。脂汗が体中ににじむ。
い、痛くない、痛いわけがないじゃないか!
でも、力が入る。
2本、3本と進み、全部で6本の糸が抜かれた。
一本一本抜かれるたびに全身に力をいれていたため、
もうヘトヘト・・・。
ズボンまで汗びっしょりになってる。
「はい、終わりです」
って、消毒とか、ガーゼを当てるとか、何にもしないの?
手術跡をどこかにぶつけてしまいそうで恐くて、
腕を振らずに、ギクシャク歩いて病院を後にした。
今度は止まってくれるなよ、と新しいシャントに語りかける。