冠動脈の風船&ステント治療が済み、ベッドのまま病室へ運ばれる。
(その話はこちら→)
絶対安静が要求されるから、ベッドを移すことはしないようだ。
「それでは、今から7時間半は動いちゃダメよ。
7時間半経ったらベッドの上でゴロゴロしていいからね。
その後2時間したらベッドに腰をおろしてイイからね。
でも、まだ歩いちゃダメよ。その後2時間で歩いてイイからね」
「長いねぇ、耐えられないカモ^^;」
「ダメよ耐えなきゃ、大量の出血を起こしちゃうからね」
「オシッコは?」
「尿瓶を置いておくからね、遠慮せずに言って」
「遠慮せずにって^^;」
「イイ?ここは甘えていいところだからね」
「わかりました」そんなこと言ってもガマンするし。
それにしても前回は6時間だったのに、今回の長さはどーしてだろう?
合計11時間半も安静だよ・・・。
3回も管を刺したからだろうか?
「少し動かしてイイ?」
2時間もジッとしていると、もう腰から背中が痺れたような感覚になってきて、
足の所在も解らないような錯覚になってくる。
「管を刺してない方の足なら、ちょっとだけね」
「ありがたい!」
「乱暴に動かしちゃダメよ」
左足に力を入れて少し腰を浮かす。はぁぁあああ~、生き返るぅ~。
時間は進まない。ちっとも進まない。
本を読んではいるが、気もそぞろ。
晩ご飯がきた。女房が食べさせてくれる。ありがたい。
前回は看護婦さんが食べさせてくれた。
ゆっくり噛んでねって言ってくれるが、申し訳ないように思えて、
急いで噛んで噛み足らなくてもさっさと飲み込んで、早々に食事を終えた。
でも、今日は女房なので気兼ねない。
「ちゃんと噛めばイイからね」
「ありがと。」
寝たまま、口に食べ物を運んでもらう。
看護婦さんと違って、女房は味見なんかしながら
「あら、美味しいわね。」とか「味が無いわね、透析食だからかしら?」とか
独り言とも語りかけとも付かないお喋りをしている。
「ああ」とか「うう」とか返事ともうめき声ともつかない返事をしながら、
いつか、介護が必要になったら、ず~っとこういう風景になってしまうのか、
と思ったら泣けてきた。
ありがたさと情けなさとが入り交じって、
ひとりじゃ生きていけないのかと泣けてきた。
食事が終わって、面会時間が終わると、女房は帰っていき、
あとはひたすらに耐えるだけの体制になる。
止まったような時間をひたすらに耐えるだけ。
消灯が過ぎ、静まりかえった病院で、枕元の電灯を点けて本にかじりつく。
背中も腰も痺れてしまい感覚がおかしくなってしまった。
7時間半は長いなぁ・・・・。
時折、どこかの病室から大声でうめき声が聞こえてくる。
こっちも負けずにうめいてやろうかという気になる。
遠慮は要らないって言ってたし^^;
夜の部の看護婦さんが交替して、血圧を測りに来た。
「交替しました、よろしくお願いします」
「はい、ガマンの限界です、助けて」
「安静中ね、わかった、特別ね」と背中と腰に手を入れさすってくれる。
少しの気晴らしになり、やっとのことで7時間半が経過する。
「はい、よく頑張りました。ゴロゴロしてイイですよ」
解放されたように寝返りを打つ。そ~っと寝返りを打つ。
「出血しないように気をつけてね。まだ起きあがっちゃダメよ」
それから、また長い2時間をゴロゴロと過ごす。
こういう時は眠くならないから不思議だ。
何かの責めにあっているかのようだ。
「どーして、今回は7時間半・2時間・2時間と長い時間安静が続くの?」
「管が太かったんですよ。太いステントを使ったんでしょ?」
「先生、そんなこと言ってた」
言っている内に眠りに落ちたらしい。
目が覚めるとあと30分で歩いてイイ時間になる。
「やった!あと30分だ!」
小躍りしたいくらいの気分で寝返りを打つ。 そ
してついにその時は来た。
真夜中3時半。草木すらもすっかり眠ってしまった時間だ。
ナースコール!
「お疲れ様、時間ですね。じゃぁそ~っと起きあがって下さい」
「トイレ、行ってくるよ」
夜中の病院の廊下をフラフラ歩きながらトイレに向かう。
解放された喜びで歌でも歌いたいくらいだ。
静まりかえった廊下で胸に手を当ててみる。
バイパス2本、ステント1本。大変なモノになっちゃったなぁ。
腎臓といい、心臓といい、
自分の力で維持できないモノになっちゃったことに何を考えればよいのか・・・・・。