「もう今日は採れるキュウリないわよ」
「全部採った?」
「ほら、こんなのも!」
「なんだ?キュウリから葉っぱが出てるじゃないか」
「ね、変でしょ?」
「写真撮っておくか」
夏が近づき、畑ではキュウリが採れ始めた。
採れ始めれば猛烈な勢いで大きくなるキュウリ。
毎日毎日キュウリに追われる日々になる。
そのうち、追い抜かれて、
おばけキュウリになって手がつけられなくなってしまう。
せっかくの食料を畑に捨てることになってしまう。
どうしようもないことではあるが、せめて、
追われてしまうまでは、追い込んでいたい。
「どれ、もう一度、見ておくか」
「これは明日だな」
「いくらなんでも明日じゃ早いんじゃない?」
「いや、油断しちゃいかん」
明日のつもりでいて、うっかり採り忘れても、明後日に間に合う。
そのくらいがちょうどいい。
夏が始まるたわいもない会話で畑に花が咲く。