空気が冷たくなって、
北風がぴーぷー吹いてきたら、
そろそろ干し芋の季節だ。
「干し芋」
どういうわけか、郷愁をそそる響きだ。
「お芋をふかすで」
90歳を超える母親が呼びに来る。
今朝は空気が冷たく、風は強く、空は快晴で、
干し芋づくりにもってこいだ。
蒸し器いっぱいのお芋を概ね30分ふかし、
(お芋が大きければ一時間くらいかな)
熱いうちにお芋の皮をむく。
それはそれは熱くて、
フーフー、ハーハー、ヒーヒー言いながら皮をむく。
お芋が冷めてから皮をむいても支障はないんだろうけど、
むきやすいからかどういうわけか、昔から熱いうちにむく。
そういうものだそうだ。
皮をむいたら、干し芋スライサーで5mm程度にスライスする。
干し芋スライサーというかどうか知らないが……
ゆで卵をスライスするみたいな感じ、と言えばわかりやすいかな。
この干し芋スライサー、もちろん市販のものもあるが、
我が家のは兄貴の手作りスライサーだ。
「私らん子供の頃は、毎朝学校へ行く前に皮をむいたもんだやぁ」
母の昔話を聞きながら、一緒に干し芋づくりに精を出す。
しかし、ひとつむくにも母の倍以上も時間がかかってしまう……。
なにせこちとら60歳超えてからのにわか手習いにつき……。
「今年は、帰ってこれやへんだらねぇ」
新型コロナのせいで、
都会に暮らす孫・ひ孫たちに会えないでいることを母は嘆く。
孫もひ孫も、このばあちゃんの干し芋が大好きだ。
(干し芋をほおばるひ孫たち⇒)
皮をむき、スライスし終えたら、
優しく一枚一枚剥がして干し網に並べて干す。
お芋が柔らかいので、やさしくやさしく、だ。
このごろの芋は(今年の品種は紅はるかだ)べたべたしており、
手にも網にもべたべたくっついてしまうので、慎重に。
あとは、日当たりがよくて風通しがよい場所につるさげて、
夜はできればひさしがあるところに移動して、
様子をみながら一枚一枚一度はひっくり返して、
3~4日もすれば出来上がり。
離れて暮らす子供たちや孫たちに、故郷の香りを送る。