バイパス手術の顛末2

あ~明かりだ目が開く…
終わったんだな…

全身麻酔から覚めてくる感じは記憶に新しいので状況が理解できる。

どこだ?手術室か病室か…女房は居るか…

「う~ん」、なんだ!痛い?違う?

「う~ん」唸り声が出てしまう…
「う~ん」治まらない…

「古山さん無事終わりましたよ」
先生だ
「う~ん」
「痛くないでしょ」
「う~ん」
痛くはないか?体を押さえつけられていて居苦しい?よく判らない…

「痛くないでしょ、大丈夫よ」
手を握ってくれる、女房だ。強く握り返す。
「う~ん」だけど声が唸り声になってしまう…

「スゴい汗…」
女房が顔の汗を拭ってくれる、ありがたい…

「うッ、うッ、」
それでも唸りも次第に治まってくる。

先生が女房に手術の説明をしているようだ。また動画を見せられてるのか…

「大丈夫よ、うまくいったって」
「うッ、うッ、」
「局所麻酔もちゃんとしてくれてあるって」
「うッ、そうか…ハッ、ありがとぉ」
「痛くないでしょ」
「ハッ、おッ押さえつけられて…る」
「何も押さえてないよ、大丈夫」
「そう…」
「前もそう言ったね、前と同じね」
「そう…」

唸り声をあげなくて済むようになってきた。汗のせいか体中が冷たいような…

「何時?」
「6時よ」
「かかったな」
「病室に帰ってきたのは5時ね」
「予定通りか」
「手術は4時に終わったんだって、順調だったって」
「そうか」

「腰が痛い」
「湿布持って来たけど」
これは手術とは関係ない、ずっとの寝姿勢のせいだが、痛い…が我慢するしかないか…

これがこの後一晩中ボクを苦しめることになる。

「いつまで居れる?」
「もう帰んなきゃいけないみたい…」
急に心細くなる…苦悩の永い夜が始まっている、少しでもこうして話をしていて欲しい、命綱はしなやかに優しく強靭だ。

「子供たちによろしく伝えてくれ、ばあさんにもな」
「無事すんだってもう連絡してあるよ」
「ありがとう」

「がんばって、じゃ ね、」
命綱は手を離し、手を降って帰っていった。

長い永い苦悩の夜が始まっていた。

(つづく)

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