バイパス手術の顛末3

手術後の病室はナースステーションと繋がった個室で、集中治療室に替わる部屋のようだ。

家内も帰り、ひとりになって自分の体と向き合い、動けないことにあらためて気づく。

両手に管が繋がれていて、その上、右手は当て板のようなものに固定されている。首にも確かに管が入っていて恐くてぴくりとも動かせない。

右足は手術の傷が足の付け根にも膝にもあり、元より動かせない。

「左足は動かしてもいいの?」
「大丈夫よ、左足も左手も首も」
「いいの?!お尻浮かせても?」
「動かしすぎないでね」
「恐くて動かせないけどね…」
「右足も少しなら大丈夫よ」

看護婦さんに聞いて動かしていけないのは右手だけだと確認できた。右手はAラインがどうのこうので…

とはいえ、ちょっと動こうとすると違和感があり痛みが走るような気がして、恐くてどこも動かせない。両手足をがっちり固められているかのようだ。

が、そんな姿勢がいつまで続けられる訳がなく、すでに腰の痛みは限界を越えている気分だ… なんとかしなくては…

一番動かせそうな左手をそ~っと動かしてみる… 動いた!
すかさず腰を揉む… 生き帰る!
左足はどうだ…そ~っと捻ってみる… 大丈夫だ!
膝も曲げてみる… 曲がる!
そ~っとお尻に力を入れてみる …入る!腰が浮く!

はぁ~~クタクタだ一休みだ…

どの辺までなら動かせそうか確かめておくことで、そこまでなら恐くなく動かせるようになる、リハビリの先生に教わったことを思いだし感謝する。

何時になった?痛み止めの効きめが切れないか不安がよぎる。

ナースコール!
「消灯過ぎたけど電気消す?」
「局所麻酔って何時まで効くのかね?」
「どうかなぁ…6時間くらい?」
「そうするともう切れるね」
「かなぁ?…」
「どうしよう座薬かな?」
「そうする?」
「座薬効くまでに30分かかるね」
「そうね、すぐには…」
「痛みだしてからじゃ間に合わんし…」

結局、日付が変わる12時までじっと…いや、もぞもぞ動いて腰をケアしながら、痛みがくるかこないか、天井の電灯を見つめながら様子を見た。

ナースコール!
「座薬頼みます」
「はい!」

これで眠るよう努めようと思う。次は6時間後の勝負だ。

目を閉じる。
す~っと何か静けさみたいなものが押し寄せてきて…

いつしか少し眠ったようだ。

(つづく)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です