透析導入のため、2週間の入院をして、透析に体を慣らしていく。
三日めを迎え、憂鬱になっている、逃げ出したい。
二日では、針を刺す痛みにとても慣れなくて、
あの衝撃を思うと、気持ちが後ろ向きになる・・・・。
この痛みをすべての透析患者が耐えているのかと思うと、
その強さに感服すると同時に、自殺者は出ないのかとさえ思う。
「痛み止めのシールを貼ってみる?」
「え?!そんなのあるの!」
針を刺す痛みを和らげるための麻酔のシールがあるという。
もっと早く教えてよ。
さっそく2枚もらって貼ることにした。
が、いざとなると疑問がわく。
どのくらい前に貼るのがいいの?
効き具合の良い時間ってのがあるに違いない。
どこへ貼ればいいの?
針を刺す位置はどうやって決めているのか。
ちゃんと説明してくれればいいのに。
こっちは何を聞いたらいいのかさえわからない素人なんだから。
「シール貼ってきたのね」
透析室の看護婦さんが言う。
「じゃ、ここへ針を刺せばいいわね」
いいわねって言われても困る。
エイヤッっと適当な位置に貼ってきたんだから。
期待する。
今日は痛くなく、汗も噴き出ないに違いない。
が、
期待が大きすぎたのか。
汗が噴き出した。
「あれ?痛かった?」
「はい・・・・」
麻酔シールの効き目は、人によって時間がまちまちだそうで、
2時間前に貼る人、30分前で効く人、さまざまだそうだ。
後になって、自分の場合には30分でも充分だということが、
経験から割り出された。
もっと言えば、刺す人の腕もあるらしい。
後になって経験するのだが、
麻酔シールなしでもチクッとくらいにしか感じない刺し手の人も居る。
刺す人の技術、刺される人の血管の具合、その日のコンディション、相性、
痛みの具合を左右するのは何なのかわからないが、
日によって痛みが違うことは事実だ。
(つづく)